投稿する

梅納豆(山田屋)の口コミ/評判

レビュー一覧(1)

  • 梅納豆(山田屋)
    suna8suna8
    3.02023/9/19

    "梅納豆"の断面のクローズアップ。どうやって作っているんだろう? そこには経験に裏打ちされた高度な技術が?

    #居酒屋 #串かつ

    #梅納豆

    #納豆

    #名古屋 #栄 #栄町

    ーーーーー

    『屋つか串い多の文注』

     私と娘は、すっかり名古屋の風景に溶け込むようなかたちをして、ぴかぴかするモバイル機器を持って、だいぶ飲食街の奥の、ゴミのかさかさしたとこを、こんなことを言いながら、歩いておりました。

    「ぜんたい、ここらの店は怪しからんね。手羽先も味噌かつも居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、喰って見たいもんだなあ。」

    「名古屋コーチンの黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞いもうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒れるだろうねえ。」

     それはだいぶの街中でした。案内してくれた食べログの地図も、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの街中でした。

     私は、すこし顔いろを悪くして、じっと、娘の顔つきを見ながら言いました。

    「ぼくはもう戻ろうとおもう。」

    「さあ、うちもちょうど疲れてきたし腹は空いてきたし戻ろうとおもう。」

    「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、昨日の売店で、手羽先を十個も買って帰ればいい。」

    「味噌かつもでていたねえ。そうすれば結局おんなじこった。では帰ろうじゃないか」

     ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。

     風がどうと吹いてきて、電線はざわざわ、ゴミはかさかさ、街路樹はごとんごとんと鳴りました。

    「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」

    「うちもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」

    「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」

    「喰べたいもんだなあ」

     二人の名古屋人は、ざわざわ鳴る電線の中で、こんなことを言いました。

     その時ふとうしろを見ますと、派手な一軒の手造り感のある店がありました。

     そして店先には

    ┌───────────┐

    │ 串かつ 山田屋 |

    │ 名 古 屋 め し │

    │ いっぺん食べてみや〜せ  │

    └───────────┘

    という札がでていました。

    「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」

    「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」

    「もちろんできるさ。看板にそう書いてあるじゃないか」

    「はいろうじゃないか。うちはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」

     二人は玄関に立ちました。玄関は渋い煉瓦で組んで、実に立派なもんです。

    (宮沢賢治「注文の多い料理店」 青空文庫より抜粋引用後編集)

店舗情報

愛知県名古屋市中区栄4丁目4-17
今日不明
0522525052