2017年07月31日

―日本有数の清流「高津川」を巡る美食旅―

―日本有数の清流「高津川」を巡る美食旅―

■水質日本一とも言われる清流「高津川」

高津川は、島根県を流れる全長81kmの一級河川です。広島県境の吉賀町から津和野町日原(にちはら)を経て、益田(ますだ)市の日本海に注いでいます。水源は樹齢1,000年を超す巨樹の根元に湧く泉「大蛇ケ池」。勘の良い人は気付かれたかもしれませんが、池の名前は日本神話に由来し、素戔男尊(スサノオノミコト)に討たれた八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の魂が宿っていると言う伝承があります。神話の国・島根らしいエピソードですね。

また、高津川は国土交通省が水質を調査する「清流日本一」に複数回選ばれており、一級河川でありながらダムの無い、日本では珍しい川となります。水質が高い=水が澄んでいる事の恩恵を受け、高津川で獲れる鮎は日本有数の味わいとされており、全国を食べ歩いている食通からの評価も非常に高い次第です。また、河口で獲れる大型の天然本ハマグリ「鴨島蛤」も格別の味わいを持っております。滋養に満ちた美しき清流、それが高津川となります。

■香り高き「高津川の鮎」

古来より日本人に愛されてきた魚、鮎。鮎は秋に孵化し、川の流れに乗って海へと旅立ち、プランクトンなどを食べて成長した後、3月から4月頃に川へ戻ってきます。そして、川では岩に生える苔を主食として成長します。苔は川の水質や流れによって状態が大きく変化します。よって、川の水質を如実に表す苔を主食とする鮎は、川によって味わいを大きく変える「川の環境を映す魚」となります。具体的に言うと、鮎の魅力として挙げられる「香り」に加えて、「旨味」や「食感(身質)」も川によって大きく異なります。

その中でも、高津川の鮎は極めて香りが高く、それでいて強い旨味も有していると言われております。高津川はダムのない川なので、森林から流れ出る清流が保たれ、良質な苔が育つ事が一因です。通な方は高津川でも本流と支流でその味に違いがあり、本流は旨味が強い点が特徴で、支流の匹見川の方は香りがよりさっぱりしているとの評価です。

■「高津川の鮎」の魅力を高津川漁協の方に聞く

高津川漁協は漁師さんから鮎を買い取り、漁師さんの代わりに全国に販売しています。島根県内のみならず関東などとも取引しており、築地(の仲卸)は勿論、東京や神奈川の料理店とも直接取り引きされているとの事。我々が取材に伺った際にも、朝に獲れた鮎たちが全国に発送されるところでした。

高津川の鮎は6月上旬に解禁され、10月中には禁漁にしているとの事。子持ちの鮎、いわゆる「落ち鮎」は資源保護の観点によりあまり獲られる事が無いそうです。しかし、残念な事に漁獲量は年々下がっており、組合の取扱量として、10年前は15トン あったところ、平成22年頃から7〜8トンに下がり、平成25年の水害のあとは約2~3トンまでに減っているそうです。理由としては、鮪のような乱獲ではなく、大雨などの自然災害による影響が最も大きいそうで、近年の気候変動は頭が痛いところです。いただける時には、自然の恩恵と漁師さんへの敬意を持っていただきたいところです。

■買って帰りたい「高津川の鮎」のお土産

高津川漁協では鮎の加工食品も作られております。代表的な製品は鮎の肝を用いた「うるか」。道の駅・シルクウェイにちはらや萩・石見空港等で販売されており、こちらのエリアを巡っていると目に触れる機会が多いはず。

旨さの秘訣はズバリ、時間と手間。フレッシュな天然モノを大量に用い、カメで3年間熟成して作っておられるそうです。熟成による旨味成分の変化を科学的に調べたところ、3年目以降にアミノ酸が増加し、5年程で天井に到達し、3年あたりが良いとのことで製品化されたとの事です。「うるか」だけでなく「子うるか」も美味しいので、合わせていただくと楽しいかと思います。また、界隈では甘露煮はあまり作らず、むしろ一夜干しや鮎鮓などシンプルな料理で食す事が多いそう。そして、お正月の雑煮は鮎出汁との事で、いただいてみたくなりました。高津川漁協謹製の食品は、東京のアンテナショップ、「にほんばし島根館」でも入手出来ます。東京にお住まいの方は、是非!

■「高津川」の夏の味覚を名店でいただく ~美加登家~

こちらは高津川で鮎料理と言えば、真っ先に名前が挙がる名店です。鮎は高津川本流で獲れたものものに絞り、さらに日原から横田あたりまでのエリアに限定して仕入れておられるそう。高津川の鮎の中でも、厳選されたものを頂けます。元々は料理旅館であったため建物は趣深く、ひとたび腰を下ろすと非日常的な雰囲気に満たされてゆきます。

女将さん、若女将の接客もきめ細かく、心地良く御料理を楽しむ事が出来ます。鮎シーズンのコース料理は基本的に鮎のみで構成されており、文字通り余すところなく鮎を満喫出来ます。
定番の【鮎の背ごし】や【鮎の塩焼き】は定番の調理であるが故に、高津川の鮎の素晴らしさをダイレクトに伝えてくれます。そして、【鮎の清汁仕立て】や【うるか茄子】など創作的な御料理に鮎の奥深さを再認識し、締めの【鮎めし】では、たっぷりの鮎にお腹も心も満たされて至福のままにコースを終えます。わざわざ足を運ぶ価値のある、唯一無二のお店だと感じました。尚、鮎以外のシーズンには天然のスッポンや河豚のコースを供されておられ、ツガニや島根県産の松茸もいただけます。

〜田吾作〜

益田にあって知る人ぞ知る名酒場、田吾作。居酒屋巡りで著名な太田和彦氏をして「日本一の居酒屋」と言わしめた田吾作では、日本海の極上の素材をいただく事が出来ます。女将さんは20歳の頃にお店を開き、2017年で開店から50年を迎えます。なんとイカ専用のタンクを積んだトラックを走らせ自ら仕入れに行き、店内にはイカたちが泳ぐ大きな生け簀が設置されております。イカ一つとってもここまでの熱量を注いでおられるため、他の素材も抜群の美味しさである事は言うまでもありません。

この度訪問するにあたり、我々は先ずこちらのお店で供されているお酒を造っておられる桑原酒場さんを訪問しました。
桑原酒場さんは、フルーティな香りや甘みを追求したお酒は造っておられず、昨今の流行とは異なる硬派な酒造りをされています。
故に、魚を引き立てる。田吾作さんでは店舗専用の酒「田吾作」をいただけます。定番の【真イカの刺身】でスタートし、杯を傾け、その他季節の刺身をいただきつつ、夏には【高津川の鮎の塩焼き】や【鴨島蛤の酒蒸し】など、益田が誇る極上素材に舌鼓を打ちます。「居酒屋」の枠を超えた独自の魅力があるお店です。